恋にはならないわたしたち
豹変した三池。
なんでだ?
エレベーターを降りて、大部屋や個室の並ぶ廊下を進むと、奥まったそこだけ何故か雰囲気の違うドアの前で三池が足を止めた。
ノックをして中から返事がある前にドアをスライドして開ける。
手を繋いだまま入ると、そこは病室というよりホテルの一室だった。
フカフカのカーペットを踏みしめて中に入ると高級そうなゆったりとしたソファーセット。
ドラマに出てくる特別室ってホントにあるんだなと瑞穂がしばし感動する。
ソファーにちょこんと座っているお祖父さんがいる。
「クソジジイ、やっぱ仮病か」
「相変わらず口が悪い、ぼくは病気やなんてひとっことも言うてへんぞ」
「入院したって聞いたら病気や思うやろ」
「それはお前の思い込みや、人間ドックやと思い付かんあたり想像力と推理力が足らんわ」
そう言うとお祖父さんがカラカラと笑う。
繋がれた手を軽く引かれ、瑞穂が前に押し出された。
「・・・こんにちは」
仕方なく瑞穂が挨拶をする。
「・・・・・・こんにちは」
僅かな間、驚いたお祖父さんがそれでも挨拶を返してくれる。