冷たい君の不器用な仮面
キュッ キュッ
マスターがグラスを磨く音だけが店内に響く。
店の中には、もう誰もいない。
さっき、最後のカップルらしき男女が帰って行ったのだ。
一応、危ないということで店の裏口から出て行ってもらったらしい。
私はココアを手に取り、一口飲んだ。
……もう冷めてる。
冷たくも甘い味が口に広がる。
「……涼那ちゃん、新しいの作ろうか?」
マスターはそんな私を見たのか、コトッとグラスを棚に置いた。
「あっいえ、大丈夫です。ありがとうございます」
私はペコっと頭を下げる。
するとマスターは少し着替えてくるね、と私に言い残し、階段を登って行った。
私は強張った体から力を抜き、椅子の背にもたれかかる。
ずっとドアを見つめていたから、肩も少しこった。
私は大きく伸びをした。
……んー、なんか一気に気が抜けたような気がする。
こんな状況なのにもかかわらず、なんだかうとうとしてきた。
私は襲いかかる睡魔に負けそうになり、ゆっくりと目を閉じかけた
そのとき
ーーーバリンッッッ
何かが割れるような大きな音が、店の外から鳴り響いた。