バレンタイン・ラプソディ
「おう高山。お疲れっ。今帰りか?」
「あ、植草」

部活の帰り、偶然昇降口で植草と一緒になった。
植草も部活の帰りなのだろう。テニス部である彼の肩からは、ラケットケースが下げられている。
部活の大会などの話を振られるままに色々話していたら、帰る方向が一緒なので自然と一緒に帰る形になってしまった。
植草は昔から人付き合いが上手で、上手く話題を投げかけてくれるので、私的に一緒にいても気負いしない珍しいタイプの男子だ。誰に対してもそんな気遣いが出来る人なので、男子には勿論、女子からの人気も高い。

(宣戦布告してきただけあって、きっと明日植草は沢山のチョコを貰うんだろうな…)

ふと、そんなことを思った。
その時、胸の奥で何かがチクリと痛んだけれど、それには気付かないふりをした。


二人並んで歩いていると、後方から照らされる夕陽で長い影が二つ地に伸びていた。

(あれっ?植草の方が大きい…?)

改めてそんなことに気付き、さり気なく横を向けば、しっかり自分より上に彼の目線があった。驚きだ。中学時代は私の方が断然大きかったのに。

(背…伸びたんだなぁ…)

男子は高校生になってもまだ成長するという。植草も、まだ伸び盛りなのかも知れない。
ふと、こちらの視線に気付いたのか「なに?」と、植草が首を傾げた。

「ううん、何でもない。ただ…背、大きくなったなぁって」

そう言うと、植草は嬉しそうに笑った。

「だろ?もう、高山を抜いちゃったもんね」
「うん」

どんどん抜いてくれていいよ。切実に思う。
男の子は大きい方が断然いい。何より頼りがいがある。
そして女の子は小さい方が自分的には理想だ。その方が可愛いと思う。
私は、どうしたって伸びすぎてしまった。明らかに。

そんなことを考えていると、植草が続けて口を開いた。
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