さよなら、大好きな人

「顔上げても大丈夫だよ、ティナ。人込みの中じゃないから」


「う、うん」



ラウルに優しくそう声を掛けられ、私は頷きながらおずおずと顔を上げた。
確かに予想していたよりは人が少なかったためにほっと安堵の息を漏らす。



わざわざ見付けてくれたラウルに礼を述べようと私はそっと見上げる。それに気付いたラウルは微笑みながら僅かに首を傾げた。



見慣れているはずなのに僅かに頬が紅潮したことに気付けば、何でもないとばかりにふるふると首を横に振る。



深く問い掛ける声はなく、私は小さく息を吐きながら胸に手を当てた。

僅かに高鳴る鼓動。紅潮してしまった顔。そして何よりもラウルが傍に居てくれるという安心感。



自分がおかしくなったような感覚になった私は考えを振り払おうと頭を振った時、わぁ、と歓声が上がり驚いたように視線をそちらに向ける。



見えたのは多くの人に祝福されながら、ゆっくりと教会から出てきたロイとミアさんの姿だった。

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