心にきみという青春を描く



「ねえ、この石膏像邪魔なんだけど」

さっきからなぎさ先輩はずっとそればかり。

以前、先輩が言っていたとおり部屋は作りかけの石膏像だらけ。これでも一応、かなり片付けたみたいだけど、なんだかあちらこちらから視線を感じて落ち着かない。


「その邪魔扱いしてるやつ、モデルはなつめちゃんだから」

……へ?そういえば、私の顔をしたものを作ってくれると言っていた気もする。


「あーだから顔が薄いと思ったんだよ」

なぎさ先輩が石膏像を持ち上げて一言。


「どうせ私は特徴なんてなにもない薄い顔ですよ」

ふて腐れながら、私はすき焼きを頬張る。


「え、褒めたのに。濃いよりいいじゃん」

「どこが褒めてるんですか?けなされた気がしました」

「うーん。難しいな。薄くて透明っぽくてのっぺりしてて素朴な顔がなつめの良いところだと思います?」

「なにそれ!もっとバカにされた気がしました!」

そんなやり取りをしていると、隣でクスリとする声


「ふ、はは。もう、やめてよ。ふたりとも」

詩織先輩の笑顔を見て、怒っていた気持ちなんてどこかにいってしまった。

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