心にきみという青春を描く



それからお鍋にあったすき焼きを食べ終わり、みんなで雑談していると、眠くなってきたなぎさ先輩があくびをしながら、詩織先輩に聞く。


「そういえば、あの時いつから店に戻ってきてたの?」

「えっと」と、口を濁す先輩の代わりに天音くんが答える。


「俺があいつのことを幸せにするって名言の少し前からですよ」

その瞬間、思い出したように顔を赤くさせたのは松本先輩だ。

私もどこまで聞いていたのか気になっていたけれど、どうやら松本先輩の言葉は詩織先輩に届いていたようだ。


「あ、あれはその勢い……じゃないけど、感情が高ぶってその……」

松本先輩が反応をうかがうように詩織先輩に視線を向ける。


あれは告白というよりプロポーズに近い気がしたけれど先輩の想いは十分伝わったはずだ。和やかだった雰囲気が、一気に緊張したものに変わる。

私が返事をするわけでもないのに、ドキドキしてきた。


「……私……」

詩織先輩がゆっくりと口を開く。そして……。

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