心にきみという青春を描く
「そういえば今日の放課後、藤田先生が珍しく部活に顔出すって聞いたよ」
「え、そうなんですか?」
忘れかけていたけれど、美術部にも一応顧問の先生がいて、それが藤田先生なのだけれど……。正直、なんで今頃と思ってしまう。
「去年の秋から来てないわけだし、さすがに誰かに言われたんじゃない?ほら、ナンパしてた保健室の先生とかにさ」
「まだ懲りずにやってるんですかね?」
前に一度だけ声をかけていた現場を目撃したけれど。
「んーみたいよ。保健室の先生はしつこい男はムリだって言ってたけど」
先輩は相変わらず気まぐれで授業に出たりで出なかったりなので、よく保健室でサボッていることは知っている。でも、そんな会話をするほど仲良しなのは知らなかった。
「……先輩も、保健室の先生みたいに年上の女性が好みですか?」
男子たちが腹痛だと嘘をついて会いに行くほどの美人だし、のほほんとしてるなぎさ先輩も例外じゃない気がしてきた。
「年上?どうだろう。好きになったことはないけど」
その言葉に胸がざわっとなる。
先輩が恋愛してる姿なんて想像はできないけれど、先輩は人を好きになったことはあるし、きっと過去には彼女だっていたことがあるかもしれない。
その綺麗な指先で、どうやって女の子に触れるのだろう。
いつもぼんやりとしているけど、必死になったり余裕がなくなったり、恋い焦がれるように特別な人を見る先輩の瞳は何色をしてるのだろうか。