心にきみという青春を描く



「先輩が、今まで好きになった人は年下の人ですか?」

「うーん。……まあね」


先輩は不自然に目を逸らして、画板や絵の具を片づけはじめた。

先輩は、分かりにくいけど分かりやすい。こうやって聞かれたくないことにはすぐ一線を引く。


「もし、年下の人が大丈夫なら、私でも可能性はありますか?」

聞きながら、心臓が口から飛び出しそうだった。


先輩との間には、たしかに見えない壁があるけれど、その前で立ち尽くしていたってなにも変わらない。

夢に向かって頑張ってる天音くんや自分の恋愛に区切りをつけた詩織先輩。その詩織先輩を諦めずに一途に想いを貫く松本先輩を見て、私も勇気をもらったから。


「なつめに俺はもったいないよ」

先輩はただそれだけの返事をして、子ども扱いするようにぽんぽんと頭を触った。


……先輩。それは優しさじゃないです。

もったいないなんて、謙遜してるつもりで。私は恋愛対象ではないと、別の人がいるよと言われているのと同じ。

 
苦いものが胸の奥から上がってきて、口の中が痛い味がした。

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