心にきみという青春を描く



「美術部顧問の藤田です。一年生は……えっと会うの初めてだっけ。まあ、ほどほどによろしく」

放課後。藤田先生は美術室に来るなり緩い挨拶をした。とても面倒くさそうな気持ちが顔に出ていて仕方なく来たというのが分かる。


「別に先生いなくても、みんなよろしくやってますよ」

机に肩肘をついて呆れた顔をしてるのは松本先輩。


「今さらなんの用ですか?先生が私たちに興味ないのは知ってるのでムリして来なくても大丈夫ですよ」

続けて詩織先輩まで毒を吐く。


「はいはい。口答えする可愛くない生徒は無視します」と、先生はふたりの声を流しながら、スライド式の黒板に文字を書いた。


【校外合宿 一泊二日 宮ノ森公園】

走り書きされたチョークを私たちはぽかんとした表情で見つめるだけ。


「こういう予定だから準備しとけ」

「え?」

机に顔を伏せて寝ているなぎさ先輩以外の全員の声がハモる。


「合宿?一泊二日?いつの話ですか?」

天音くんが怒ったように尋ねると「今週の土日の話」と、すぐに返事が帰ってきた。


……ちょっと急すぎない?部活の合宿って運動部がやるイメージが強いし、野球部やテニス部はすでに春合宿をやったらしいけれど。

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