心にきみという青春を描く
「みんな先輩のことを大切に思ってます。先輩が大事です。もう少し弱さを見せてください。ひとりで抱えないでください」
先輩が自分の意思で繋いできた場所を壊そうとするなんて、そんな悲しいことはさせたくない。
「……私じゃダメでしょうか?」
言いながら声が震えた。
なんの取り柄も秀(ひい)でたこともない。
平凡で平坦で平べったいところをただ平行線に今までは歩いてきた。そんな私が必死に手を伸ばしたいと思ったこと。それが、なぎさ先輩でした。
「私じゃ先輩の救いになれませんか?」
先輩のことを支えたい。一番近くで寄り添いたい。
こんな空っぽになってしまった部屋でひとりで過ごすぐらいなら、尚更に私は先輩の隣にいたい。
「俺はやめときな」
先輩がぽつりと呟く。
「なんでですか、なんで勝手に決めるんですか」
「俺はなつめが思ってるヤツじゃないんだって!」
声を荒らげた先輩を初めて見た。先輩は余裕がない表情でぐちゃりと頭を抱えたあと、深いため息をはいた。
「何度も言わせないで。俺は優しくないし思いやりなんてない。頭は葵のことばっかり。そんな俺といてなにが楽しいの?傷つけるだけでしょ」
「傷ついてもいいです」
「俺はイヤだ」
先輩の口調がさらに強くなる。