心にきみという青春を描く



「これ、貰っていいの?」

気持ちが落ち着きはじめた頃、先輩が床に落ちていたキャンバスを拾い上げた。するりと布を取ると、先輩のために描いた青いフルーツが姿を現す。

  
「一番いい場所に飾る約束ですよ」

「線ガタガタ。デッサン狂いまくりだね」

「そ、それは枠に囚われずに描いたっていうか……」

モゴモゴしてる私を見て、先輩がクスリと笑った。


「うん。一生懸命描いてくれたってすごく伝わる。ありがとう、なつめ」

先輩が見せる久しぶりの笑顔。そして先輩はそのまま私を抱き寄せた。胸の中に顔が埋まると、心地いい先輩の優しい匂いがした。


これがどういう意味なのか、今はあえて探らない。


この暖かさがあれば、その心に誰がいても私はなぎさ先輩のことを愛しく思える。

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