心にきみという青春を描く



今日は泣かないと決めていたのに、とめどなく涙が溢れてきた。


私たちは今まで一瞬でも一秒でも、気持ちが交わることなんてなかったかもしれない。

でも先輩と過ごした日々を、やっぱり俺たちはなにもかもが違ったねって、一括りにしてほしくない。

歩んできた道も経験してきたことが違っても、重なる瞬間がきっとある。

それを今日から、ううん、今から探していきたい。


「子どもみたいに泣かないでよ」

「先輩だって、泣いてるくせに」

なぎさ先輩はやっと心に溜め込んでいた弱さを流してくれた。


「なつめはバカだね」

「その言葉は先輩に返します」


「じゃあ、俺たちはバカだ」


ふたりして、カッコ悪いぐらいにむせび泣いた。


この愛しさを色で表したら、なにも描かれていないキャンバスみたいに真っ白だ。

ここから、なにを描こう。

なんだって描ける。何色にもなれる。

私たちはまだ、青春の通過点なのだから。

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