夜桜は山奥の
現実
梅雨。
ジメジメした雰囲気は家中に広がる。
中途半端な長さの茶髪も広がる。
今日は学校は休み。
高校は中学と比べて家から遠いが、それでも私は学校にいる方が良かった。

こんな家、もう一秒もいたくない。
私は数少ない荷物を1つのリュックにまとめる。

ガシャンッ!
パリーンッ…。

ほらね、今日もキッチンが賑やか。
二階にいるのに騒がしさがよく聞こえる。

「桜ぁーっ!来い!」

罵声は家中を凍らせた。
階段も手すりも恐ろしさで冷たくなっている。
リュックを玄関に置き、靴を出す。
私はキッチンへ向かう。
「スリッパ、オッケー…。」

母はいつものようにキッチンにいた、それは料理をしてるわけでもなく、単に皿を落としただけでもない。
キッチンの周りまで皿の破片が飛び散っている。

「あんたがいなければ…。
あんたを産まなければ…。」

息を呑んだ。
心を痛めたからではない、
こいつにいつ殺されるかわからない。

「ごめんなさい私が全部悪いです。」

少しの反抗心を見せるような言い方をしまった。

「は?何?今の言い方…。
言い方、気をつけなさい?
私ならいつでもあんたを殺せるんだから。
私は警察に捕まらない、何故かって?この障害があるとね、捕まらないのよ人1人殺したくらいで」

つまりはそういう事だ。
母は精神病を患っている。
幼少期の環境、離婚などの過去からだそう、そして今では私も症状を引き起こす原因の1人…。

母はコーヒーカップを私の足元へ投げつけた。
「我慢の限界なのよ
この家から出て行きなさい」

私は覚悟していた。
だがおきまりの台詞のように言った。

「すみません、少し気を抜かしてしまって。以後気をつけます」

母は
包丁を握りしめてこう言った。

「出て行かないともう殺すと思う」

私はこの時を待っていたのかもしれない。

急いでキッチンを後にした。
その途中で家の固定電話横の写真を取る。
家を出るという事は、この現実から逃げるという事だ。
その事にまた母が怒り狂って私を追いかけてくる可能性があるため、
私は振り向かずに計画通りに家を出る事に成功した。

本物の鬼に追いかけられている気分だ、全速力で走る。

あんな家、二度と帰るもんか。


不吉にも、小雨だった雨が土砂降りになった。
携帯電話は持っていない。
親戚もいない。
バイトもできるかわからない。
でも交番に行ったらまたあの家に…。

お金が全くない。
そういえばここ最近何も食べてない。
未来がない、見えない、
土砂降りの雨のせいで前が見えない…

どこへ行けば……

ずっとさまよった。
わたしは雨の中、
意識を失って倒れこんだ。







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