あの日、もう一度

***



目を覚ますと額から滴り落ちる程、汗をかいていた。

嫌なものを洗い流すようにシャワーを浴びて、スーツに着替える。

クローゼットが閉まらないので間を除くと白い箱が無造作に落ちていた。

重たい腰を下ろし拾い上げ、上を見る。

どうやら上の段から落ちてきたようだ。

何が入っているか思い出せずに蓋をそっと開けると、淡い紺色のネクタイがそこにあった。

これは確か、彼女からプレゼントされたものだ。

付き合い始めて間もない頃、彼女からの贈り物が嬉しくて。

もったいなくて使えなかったので奥にしまっておいたのだ。

結局、付けてる姿を一度も彼女に見せることはできなかったな。



***
< 3 / 12 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop