☆君との約束




「莉華……」


涙が溢れた。


君に勝つのは無理だと思った。


君はきっと、これからも俺に勝ち続ける。


それで、俺は負け続けるんだ。


君が俺を愛してくれる以上に、


俺は君を愛すよ。


守るよ。


だから。


「幸せに、なろう……幸せになって……俺と」


すると、莉華は顔を綻ばせて。


「はい」


少しだけ、涙ぐんで。


「不束者ですが、宜しく御願いします」


―そう、応えてくれて。


傍から見たら、笑える茶番劇だろう。


四十路にもなって、何をやっているんだって。


馬鹿みたいな話だろう。


俺の事を嫌いになる人も、


莉華を嫌悪する人もいるだろう。


でも、それでいい。


他者になんてわかってもらわなくて、結構だ。


これが、俺たちの恋の形。


愛の形。


何があっても、愛すと誓った。


おはようと言ったら、


おはようと返ってきて。


行ってらっしゃいと言ったら、


行ってきますと、返ってくる。


いただきますと、共に食事を取って、


ご馳走様と、恵みに感謝して。


おやすみと言ったら、


おやすみと返ってきて。


君がいる生活。


当たり前のように見えて、


この世界で一番、不安定な幸せ。


そんな当たり前の、


奇跡のような毎日を、


君と過ごしていきたいと願った。



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