☆君との約束


「莉華っ」


雨が降りそうな中だからか、今日は部屋にいた莉華。


俺の訪れにも表情ひとつ崩さず、気づいていないのか、天井を見つめている莉華。


「莉華……俺は、間違っていたのかな……?」


分からなくなる。


あの家の中じゃ、"普通”とは一体なんなのか。


"普通”でいる必要は無いと言われれば、その通りだ。


でも、あの家の中の"普通”は、莉華が生きていた世界での"超異常”。


嫌だ、君から離れるのは。


君と心を通わせることが困難なら、せめて、君と同じ世界にいたいと望んでいるだけ。


壊れてでも、家を守ることが偉いこと?


それが、名誉?


愛してもいない女のことを、無理やり愛すことが、果たして正しいことなのか?


―わからない。


そして、勿論、莉華も返事をくれない。


俺が泣いているからか?


こちらを見ようともしない。


悲しくて、苦しくて、君をそんなふうにしたのは自分なのに、俺の方を見て欲しくて。


「莉華っ、」


頬に触れて、自分の方に向けさせる。


変わりもしない表情に、胸が痛む。


そっとキスすると、昔は真っ赤になっていたのに、莉華は無反応のまま。



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