☆君との約束



「……なさっ……」


倉津医師が去って、魅雨が静かに出ていった病室の中。


暫く、無言で診断書に目を通していた莉華は、読み終わったのか……そこに書いてあった経過が、彼女の細い肩にまた、重石を乗せたのか。


無言で、その書類を落とす。


莉華と俺、そして、相馬と依は残された中、読み終わるのを待っていた俺は、それを拾い上げて。


莉華は読み終わったあとから、ずっと泣いて、震えるばかり。


「ひなくん……」


「大丈夫だよ。依、相馬」


優しく頭を撫でてやると、体を預けてくるふたり。


「相馬、ありがとね」


―倉津医師を連れてきてくれたのは、どうやら、相馬だったらしい。


相馬が外に出たことに気づいた、看護師が呼んでくれたと。


莉華は震えて、ブツブツと何かを呟いて。


「ごめ……なさっ……」


「……」


こんな姿を見てから、漸く、自分がどれだけ追いつめていたかを再度、思い知るなんて。


「……ねぇ、莉華、なんで謝るの?」


「……っっ」


「俺、結婚してないよ?」


「私がいたからでしょ?だから、あなたは―……ごめんね。離れてから、こんなふうになれば……そうしたら、あなたの十六年間は……」


「バカ言わないで」


「だってっ、陽向は―……」


「女も抱いてない。これまで莉華以外で、深く抱き合ったことは無いよ。この十六年、君をそんな目に合わせたこと以外で、後悔したことは無い」


そう言うと、莉華は戸惑いを目に映して、顔を上げる。


あーあ。


涙で、ぐちゃぐちゃ。



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