☆君との約束
「ひなくん……」
「っ……」
依の不安げな声が聞こえる。
ごめんな、ごめん。
大丈夫。
きっと、大丈夫。
「―もしもし、陽希?」
魅雨が、背後で電話をかけている。
今頃、家はどんなふうになっているだろう?
「ひなくん……」
「ひ、陽向?なんで……なんで、そんなに……」
「―気が付いたんですか!莉華さん!!」
バタバタとした、騒がしい足音。
駆け込んできた、倉津医師。
「先生……」
倉津医師のことは、分かるのか。
腕を緩めると、莉華は身を乗り出して。
俺はそっと、端に寄る。
「あのっ、今、何年経ったんですか……」
言いにくそうに、聞きにくそうに、それでも、倉津医師は
「落ち着いて、聞いてくれな」
脈を測りながらも、答える。
「君が、正気を失ってから……十六年」
「じゅ、う、ろく……?」
「君は今、四十三歳だ」
長い、長い、眠りから覚めた。
そして、残るのは色んな不安。
「……十六年間、陽向は私の、、そば、に?」
君の瞳に浮かぶのは、罪悪感。
倉津医師は、無言で頷く。
「……身体に異常はない。ゆっくり、話しなさい」と。