【完】ヤンキー少年とコヒツジ少女
初めての感情にどうしたらいいのか分からなくなる。


誰かを助けて、初めてお礼を言われた。
ありがとうと、言ってもらえた。
怪我の心配をされた。


こんなこと、初めてだ。


いつもは責められるか怯えられるかの2択で。
感謝をされたり、心配されたことなんて一度もなかった。


彼女は、違うのだろうか……?
俺自身を、見てくれるのだろうか……?


具合が悪くてきっと俺の顔も分からなかったんだろう。
でも、それでも。
手に持っている白いハンカチが、彼女の心配の証だ。


小梛羊……。
名前を心の中で唱えると、胸が締め付けられる。
手元のハンカチがなぜか眩しく見えた。


医務室の方を振り向く。
扉の向こう側に、彼女がいる。
俺自身を見てくれるかもしれない、そんな人が。


この感情が一体何なのか。
気付くのにそう時間はかからないだろう。


初めて芽生えた感情。
大切にしたい、そう思った。


「剣崎くん?どうかした?」


「いや、なんでもない。」




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