かけがえのない人
「何?なんか文句でもあるの?」
でもわたしがそうやってきくと、少し目を伏せて小さい声で「返して」といった。
「何?こんなボロボロの本なのに。てかこれ前にも彩香読んでたよね?そんなにこの本が好きなわけ?」
「返してよ」
そういって手を伸ばしてきた彩香の手を払うと、わたしはその本を窓の外に捨てた。
「あ、ごめんね。手がすべちゃって」
彩香は泣きそうな顔をしたけれど、特に本を取りに行く様子もなく、放心状態のようにもみえた。