副社長と恋のような恋を
　副社長は私の膝の上に置いてあった飲み物をジュースホルダーに入れた。そして運転席と助手席の間にあるアームレストを上げると、物を置くスペースが出てきた。そこにフライドポテトとチキンナゲットを置く。

「悪いんだけど、グローブボックスからウェットティッシュを出してもらえる」

「はい」

　グローブボックスからウェットティッシュを出して、副社長に手渡した。すると副社長は食べ物の横にそれを置いた。

　車から見える大きなスクリーンを見て、小さな疑問が浮かんだ。

「あの、映画の音声ってどう聞くんですか？」

「そうだ。周波数を合わせないと」

　副社長はカーラジオのチューニングを合わせた。すると、これから上映される映画の主題歌が流れてきた。

「ラジオから聞くんですね」

「うん。車、動かさないからシートベルト外していいよ」

　自分がシートベルトをしたままだと気づき、シートベルトを外した。周りに停まっている車をみると、カップルや友達同士、家族連れなど、普通の映画館と同じような客層なんだなと思った。

「あの、なんでドライブシアターが夜のピクニックなんですか？」

「車の中とは言え、野外で映画見てなんか食べて、もうピクニックでしょ」

「まあ、そうとも言えますね」
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