副社長と恋のような恋を
 副社長は楽しそうに袋からパンフレットを出し、中をパラパラとめくっている。

「この映画知ってる?」

「去年、テレビCMで観ましたけれど」

「そうなんだ。去年は忙しくて映画とか気にする余裕がなかったから、知らないはずだ。明日だとアクション映画だったんだけど、こっちの映画でよかった?」

「はい、ちょっと観たいなと思っていた映画なんで、こっちでよかったです」

「なら、よかった」

 私もパンフレットを出し、ページをめくってみた。映画のパンフレットを見るのなんて久しぶりだった。映画はDVDレンタルがほとんどで、映画館自体に行くことが減ってしまっていた。

 パンフレットを見ているうちに、周りが暗くなった。場内を照らしている照明の明かりが落とされた。カーラジオから鑑賞中の諸注意が流れ始める。

「始まるみたいですね」

「そうだね」

 映画はテンポよく話が進んでいった。まったく性格の合わない男女がひょんなことからルームシェアをするというところから始まる。二人は会社の同僚。

 生活スタイルも価値観もすべて違う。そのせいで小さなことでケンカをする二人。そのかけ合いが、本当におもしろい。

 副社長と同じタイミングで笑うと、副社長は目でおもしろいよねと言ってくる。
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