副社長と恋のような恋を
「酒井ちゃん、こっち」

 私は村田先輩の隣に座った。

「二人とも早いですね」

 その言葉に二人は苦笑いをした。

「早いんじゃないの。抜けてきたの。ご飯食べたら会社に戻るの。お酒が飲めない」

 村田先輩は泣きまねをしながら抱きついてきた。

「お疲れさまです。デザイン部が多忙なのは有名ですもんね」

「酒井ちゃーん」

 抱きしめる腕にさらに力が入り、少し苦しくなった。私たちのことを見ていた山岸さんが、小さな声でいいなと言ったのを聞き逃さなかった。

 山岸さん、もしかして村田先輩のこと好きなのかな。村田先輩の背中をさすりながら、さりげなく山岸さんのことを見た。一応普通の表情だった。

「二人ってどういう知り合いなんですか?」と山岸さんが聞いてきた。

 村田先輩は私から離れて、高校の先輩後輩と答えた。

「どうりで、仲がいいんですね」

「そう。酒井ちゃんって高校のころから全然変わってないの」

「それは村田先輩もですよ」

 さりげなく山岸さんを見れば、ちらっと村田先輩を見たあと、高校の時もこんな感じだったんですかと聞いてきた。

「はい。後輩の面倒見がよくて、後輩から慕われていましたよ」

「いいな、高校に村田さんみたいな人がいたら、学校が毎日楽しかったんだろうな」
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