隣の席の魔法使い。




「泣いてるの?」


ふと物陰から聞き覚えのある声に声をかけられ足を止める。


「な、泣いて、ない」


そして私は私に声をかけてきた岡崎くんの言葉を否定した。

が、その否定する声は鼻声で弱々しく自分でも気付かぬうちに泣いていたことに今、気付かされた。


「気づいてなかったんだね」


すっと伸ばされた綺麗な岡崎くんの指が私の頬に触れ、私の涙を丁寧にすくう。


「ほら」


そして私に見せるようにその綺麗な指を私に見せた。


1粒の涙が岡崎くんの指の上で揺れる。


そんなこともうわかってるわよ。


「〜っ」


そんな悪態のひとつでもついてやろうと思ったのに上手く口が動かない。

その涙を見るとなぜが胸がいっぱいになって先程よりボロボロと涙が流れ始めた。


「……っ!」


そんな私を岡崎くんは何も言わずに抱き寄せたので私は驚いて少し固まる。


「胸、貸してあげる」


優しい岡崎くんの声が耳に届く。

人肌が私の心に染み込む。

優しい優しいものに包まれている気がする。


「……ありがとう」


私は岡崎くんの優しさに甘えることにした。







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