私の失恋の行き着く先は…No.6


緑川主任は会社を出たところに丁度いたタクシーを捕まえて私を乗せた。

「気をつけて帰れよ。なにかあったら連絡してこい。とにかくゆっくり休め、な?」

「はい…」

こんな酷い顔をこれ以上晒したくない。

それに本当のことが言えず、後ろめたさも感じていた。

緑川主任と目を合わせることが出来ずに、ほどなくタクシーはゆっくりと発車した。

帰宅するなり、部屋着に着替えてベッドに潜り込んだ。

ひとりになると、途端に昨日の光景が甦ってくる。

それでも涙は流さないように必死に我慢した。

泣けばまた目が腫れる。

身体を丸めて目を瞑ると、いつの間にか眠っていたようだ。

遠くのほうから音が聞こえる気がして目を覚ました。

『ピンポーン!』

玄関のチャイムが鳴っている。

< 16 / 60 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop