私の最後の夏の思い出
私が困惑しているのがわかったのか、おばあちゃんが後ろから私の肩にそっと手を乗せて、座るように促してくれた。
「ゆりちゃん。瑞樹くんは、昔ゆりちゃんがここに来た時よく遊んでいた子だよ。覚えてないかい?」
 そう言われても何も思い出せない。静かに首を振るとその瑞樹くんは少し悲しそうに微笑んだ。
「俺は覚えているよ。ゆりちゃん、昔一緒に遊んでる時よく後ろからちょこちょこついて来たよね。まさか早瀬さんの家の孫だったなんて。驚いちゃったよ。」
 それを聞いて、一つの言葉が頭に浮かんだ。『みぃちゃん』。そんな人知らないけど、今急に思いついた。小さくちぃちゃんと呼ぶと、瑞樹くんは驚いたように私の顔を見た。
「え、その呼び方。…懐かしいな。そうだゆりちゃん、あっちでちょっと話さない?」
 そう言って縁側を指差す瑞樹くんに頷いて私たちは縁側の方に向かった。

「そっか〜。ゆりちゃん、覚えてないのかぁ…。」
 そう少し残念そうに眉を寄せて麦茶を飲む彼を、やっぱり私は知っているような気がした。何か言ったほうがいいのか、と言葉を探していると瑞樹くんは嬉しそうにでも、と言った。
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