同姓同名のあの人は
付き合ってからも今まで通りで、変わった事なんてほとんどない。
私は別に変わってほしいとは思ってない。
でも一度でいいからデートはしたいなとは思っていた。
付き合って4週間たったもう6月だ春も終わる。
そう思っている時メールが届いた。
〈今週の日曜日、部活が休みになったから、デートにでも行きませんか?〉
奏汰くんからのメールだった。
千田くんから奏汰くん呼びになったのは付き合って少し経った頃だった。
「デ、デート!?」
私はスマホを持って慌てた。
「え、えっと…へ、返事打たなきゃ」
〈その日、何も用事ないからデート行きたいです!〉
と打って数秒これでいいか考えて返信した。
すると直ぐに奏汰くんからメールが届いた。
〈よかった!じゃあ仙台駅のステンドグラス前に10時に待ち合わせでいいかな?〉
〈うん、いいよ!日曜日楽しみにしてるね〉
今度は慌てないで打ち、返信する事が出来た。
また直ぐに奏汰くんからメールが届いた。
〈僕も楽しみ!じゃあまた明日学校で〉
〈うん、また明日ね〉
と打って返信した。
その後私は、下にいるお母さんの所に行った。
「お母さん、あ、あのね…」
お母さんは私の声に反応して、夕ご飯の支度をする手を止めてこちらに振り向いた。
「なーに?」
お母さんは首を傾げて私に聞いてくる。
「こ、今度の日曜日にデ、デートに行くから、お小遣い欲しいんだけどいい!?」
勇気をだして少し大きい声で言い切った。
最初に反応したのは、ソファーに座っていたお兄ちゃんだった。
「美結!彼氏いたのか!?」
お兄ちゃんはソファーから立ち上がって、私の方まで来て私の両肩を軽く掴んだ。
「う、うんゴールデンウィーク終わって少し経ってから…」
私はそんなお兄ちゃんにタジタジになりながら答えた。
「あらまあ!素敵!」
「母さん!いいのかよ!」
お兄ちゃんは両手を頬に当てて微笑んでいるお母さんの方を見た。
「あら、妹に彼氏が出来るなんて、嬉しい事じゃない!」
「そうだけど、デートの日に何かあったらどうするんだよ!」
今度はお母さんの両肩を軽く掴んだ。
「何かって、何?」
お兄ちゃんの言っている事が分からず首を傾げる私。
「…まあいいか、兄ちゃん美結の彼氏に会ってみたいから、デートの日家に連れて来いよ?」
お母さんの両肩を掴むのをやめて、また私の方を向いてそう言うお兄ちゃん。
何かはぐらかされた気もするがいいか…。
「奏汰くんがいいよって言ったら、連れてくるよ」
「お母さん美結の彼氏に会うの楽しみだわ!」
とニコリと笑うお母さん。
この日、私達は知らなかった日曜日のデートの日にあんな事が起こるなんて考えてもいなかった。