Deal×Love
「断らせようとするなら次の相手を探すまでだからな」

立ち上がったとき、耳元で父が私に囁いた。


苛々するが、今は我慢我慢……


「椿さん、少し二人でお話をしましょう」

襖ですでに待っていたお見合い相手の彼はそう言うと私に手を差し向けた。

襖の外にある庭園で話そうということだろう。

私は歩み寄り、差し出されている彼の手に自分の手を添えると、彼は少し進んで段差の下にある靴を履き、私にも履くように促す。


「段差に気を付けて」

草履を履くとリードをされたまま奥の方へと歩く。


この人、女性の扱いに手慣れていそう。
私に手を差し出したのも自然だった。

男性に免疫がない私は、この二人きりの状況にも、手に触れているだけでもドキドキなのにーー……って、ドキドキしている場合じゃない!
< 27 / 424 >

この作品をシェア

pagetop