あけぞらのつき

「ミサキは、これを見たのか?」



「そうだよ。何度も言わせるなよ」


「一体、どういうことだ」



「さあね。でも、遠野はアレを、生きていると言うんだろう?」


遠野は何も答えず、食い入るようにスクリーンを見つめた。

その眼差しは、ミサキの見た風景の中に、手がかりを探そうとしているようだった。



「怖いモノの気配と言ったな。小野寺の死体が恐ろしかったのか?」



「あんなものが、恐ろしいわけないよ。山ではよく見かけるものだ」

歌うようにミサキが答えた。



「では、お前の感じた怖い気配とは何だ?」



「御曹司!」

アキが厳しい声を発した。


アキの腕の中でミサキは、肩で短く息をしながら、目を見開いて震えていた。

その怯え方は、尋常ではない。


現実にも映像にも、遠野はミサキの恐れるモノの正体を突き止められないでいた。



「守護殿は、何かご存知か」


「今する話しでは、ありません。それに、御曹司の捜し物とは関係もない」



アキは冷たく突き放すように言った。


狂ったメロディーで、オルゴールが鳴った。スクリーンは白いまま、不快な音楽だけが鳴り響いた。


カタカタと音を立てて、映写機が回る。


滲むように浮かび上がった映像に、遠野は息を飲んだ。






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