死の代償
「どういう事?教えてよ」

 美雪は、知りたいと言う欲求に満たされて、悪魔に迫った。

「わたくしたちは、つまるところ生命塊に仕えているわけで、

そこから分けられたあなた方も生命塊と、次元は違えど、同じ存在なのです。

これ以上を理解するにはここの言語体系では表現できません」

「じゃあ、どうすれば……」

「すべての表現と知識は4つ先の次元に満ちた生命塊にあります。

そこへ行けば、自我と全との融合によってすべての表現と知識を得ることができるでしょう。

もっとも、あなたほど探求心が強いと融合しても自我を失わずにすむかもしれませんが。

すべての表現と知識、これがあなたに与えられる死の代償です」

 悪魔は、そこでいったん言葉を止め、改めて美雪を見詰めて続けた。

「どうします?あなたはそれを望みますか?」

 もう答えは……そう、10年前のあの時から決まっていた。

 運命によって……

「あたしは、すべてを知りたい。

そして、自分の意味を知りたい。

望みます。あたしに、すべての表現と知識を」

 そう答えると同時に、美雪を構成するすべてが光と闇に満たされていった。

 ゆっくりと心地好いその感覚に満たされ続けられながら、美雪は思った。

 死は生の終焉ではなく、新たなる生への変化点でしかない。

 どこまでも高く落下していく感覚。

 混沌すら均一に見え、すべてが満たされ、力が溢れる。

 その先に……

 そして、死の代償は支払われた。

END



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