大江戸ロミオ&ジュリエット

「志鶴からは黙っておいてほしい、と云われてござったが、されども、松波殿にとっては御家(おいえ)の大事に関わることで、いつまでも放っておくことはできず……」

彦左衛門は苦り切った面持(おもも)ちで言葉をつなぐ。

「……本来ならば、()れほど両家にとって目出度(めでた)きことなど、他になかろうござるも」

無念のように呟いたあと、意を決したように告げた。

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