大江戸ロミオ&ジュリエット

武家の子女は幼き頃より、百姓が納める年貢米があるからこそ、御公儀や藩から禄米をいただけるのだということを、親から口を酸っぱくして教え込まれる。

武家はいただいた禄米を、蔵前にある「札差(ふださし)」で金子(きんす)(貨幣)に替えてもらわねばならぬので、その時々の米の相場に振り回される。

自らはなにも生み出さぬ身分であるがゆえ、いただいた米を一粒たりとも粗末にすることはできぬのだ。

それゆえ、金子が直接入ってくる商家や、金子で取引する藍や菜種油などの商品作物に精を出す豪農の方がずっと贅沢で良い暮らしをしていたりする。


志鶴はさような教えが染み込んだ「武家の(おなご)」である。

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