大江戸ロミオ&ジュリエット

◇剣ヶ峰の場◇


志鶴(しづる)は目を開けた。

「……あっ、しぃちゃん……目をお覚ましになったっ」

初音(はつね)がほっとしたように、志鶴の顔を覗き込む。

幼き頃より見知った顔が、目の前にある。
なんだか、長い夢を見ていたみたいだ。

……きっと、そうであろう。
夢、だったのだ。「南町」に嫁ぐなんて。


竹内(たけうち) 玄丞(げんしょう)が手早く志鶴の手首をとって脈を診て、それから目や口の中を確かめる。

「……滋養がまったく足りておらぬな」

眉根を寄せて、唸った。

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