イジワル御曹司様に今宵も愛でられています
「千紗都さんもういらしてたのね。お待たせしてごめんなさい」
「いえ、先生。私も今来たばかりです」
「あら、藤沢さんとお知り合いなの?」
「はい、以前お家元からご紹介いただいて」
私が言うと、先生は納得して頷いた。
「さあ千紗都さん、幽玄さまもいらしてるわよ。稽古の前に先にご挨拶に行きましょうか」
あれ、千紗都さん幽玄さまとお会いするんだ。もうすぐ免状をもらえるって言っていたし、そのご挨拶かな。
「はい。それじゃ、藤沢さん失礼します。お稽古これからもがんばってね」
「ありがとうございます。松原さんも」
可愛らしく手を振る松原さんに、頭を下げる。
「藤沢さん、今日も最後までありがとう。申し訳ないのだけど、教室に鍵を掛けて総務所に返しておいてくれないかしら」
「わかりました」
「ありがとう。それじゃ、また来週ね」
葛城先生と松原さんを見送り、私は言われた通り総務所に向かった。