イジワル御曹司様に今宵も愛でられています

 その羽根木さんはというと、ほとんど毎日のように連絡をくれた。


 父の容態を尋ね、特に変化は見られないことを告げると、落胆とも安堵とも取れるため息を漏らす。

「そっか。結月ちゃんも毎日大変だけど頑張ってね。でも、どうか無理はしないで」

 そして最後に私を労い励まして、彼は電話を切る。


 他に家族もなく、自分一人で父と向き合う日々の中で、父を気にかけてくれる羽根木さんからの電話は、徐々に待ち遠しいものになりつつあった。


 ようやく一息ついた頃、私は大学在籍中の四年間お世話になったアルバイト先の居酒屋に顔を出した。

 送別会を予定してくれていたのだけれど、父のことがあり、結局取りやめになったのだ。


 最後の挨拶とその時のお詫びも兼ねて、菓子折りを手にその居酒屋が入るテナントビルへ向かう。

 準備中の札がかかる店のドアを開けると、カウンターの奥から店長が顔をのぞかせた。

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