イジワル御曹司様に今宵も愛でられています


 この八幡様には、一本の木に一重と八重の花が混ざって咲くとても珍しい桜の木がある。
 
 八年前に交通事故で亡くなった母は、ここの桜が好きだった。


 母がいた頃は家族三人で、母が亡くなってからは父と二人で、毎年この八幡様で手作りのお弁当を持ってお花見をするのが私達家族の恒例行事だった。

 しかし今年は、八幡様で待ち合わせて、父が予約してくれたレストランで私の大学卒業と就職のお祝いをすることになっている。


 私は、四月から都内にあるブライダル関連の会社でウェディングプランナーとして働くことが決まっている。

 ずっと追いかけて来た夢がようやく叶う。

 これから始まる新生活に想いを馳せ、私はうきうきとした気持ちで咲き誇る桜を眺めていた。


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