イジワル御曹司様に今宵も愛でられています
「……父さん遅いなぁ」
私の父は、母校である大学の史学科で考古学を教えている。
今日は朝から一度大学に顔を出して、用事を済ませたら待ち合わせ場所に直行すると言っていたのに。
「あ、何か来てる」
スマホを確認すると、父ではなく親友の恵理からメッセージが入っていた。
恵理とは入社式の前に二人で飲みに行く約束をしている。その日程の確認だった。
恵理は大学で同じ経営学部に所属していた友人で、卒業後は大手のエアラインに入社が決まっている。
レイヤーの入ったロングヘアが似合う大人っぽい美人で、さっぱりとした性格。
高校までは勉強ばかりで、世間知らずで視野の狭かった私を色々なところに引っ張り出して世界を広げてくれた、かけがえのない友人だ。