イジワル御曹司様に今宵も愛でられています

 オムライスを食べ終わって、みんなで食後のお茶を飲んでいる時だった。

「あっ、私ちょっと観たい番組があるのよね」と言いながら、田上さんがテレビのスイッチを入れる。

 画面いっぱいに映し出されたのは、竹籠に生けられた桜の枝だった。


 まるで春風に吹かれたように丸みを帯びてしなる桜の枝には、薄桃色をしたたくさんの桜の花が咲いている。

 ほのかに甘く香る春風が、私のすぐ側を吹き抜けた気がした。


「これってなんの番組なんですか?」

「園芸番組なんだけどね、月一でいけばなの紹介があるのよ」

「へえ、いけばなですか……」


 そう聞いて頭を過るのは、羽根木さんのことだ。

 そういえば今日はまだ羽根木さんからの連絡がない。

 そろそろ電話が入る頃かもしれない。視線は画面に向けたまま、私は鞄に入れているスマホに手を伸ばした。




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