イジワル御曹司様に今宵も愛でられています
「でも……」
それでも首を縦に振ろうとしない私に、羽根木さんはさらに苛立ちを露わにする。
「手っ取り早く俺が圭吾さんの闘病資金を援助したっていいんだよ? でも、もし圭吾さんが起きていたら、『おまえ何考えてんだ』って俺のことを叱り飛ばすはず。そうだろ?」
「そうですね。父ならきっと怒ると思います」
他人への援助は惜しまない人だけど、智明さんがそうすることは決して許さないだろう。
きっと父なら『そんな金があったら、自分のために使え』って言うはずだ。
「俺は圭吾さんを怒らせたり悲しませたりしたくない。そして今ここで君のこと知らんふりをして、後あと後悔もしたくない。こうすることがベストなんだ。悪いけど、俺だって譲れない」
絶対に引かないとでも言いたげに、羽根木さんはぴしゃりと言い放った。