イジワル御曹司様に今宵も愛でられています

「ひどい! バレッタが外れちゃったじゃないですか」

「はは、悪い。つい嬉しくて」

「何が嬉しくて、ですか!」


 まるで子どもみたいだ。父の病室で初めて会った時は、優しくて気品があって、見た目だけじゃなく中身もおとぎ話の王子様みたいな人だと思ったけど。

 羽根木さんはこうして時折、子どものように無邪気な一面も見せる。

 しかも近くにファンがいるっていうのに、この距離の近さ。無自覚なんだろうか。

 葛城さんもさぞかし苦労してきたんだろうな。想像できる。


「さて、藤沢にも褒めてもらったし、あともうひと踏ん張りするか」

「褒めることしかできなくてすみません」

 何もできないことが申し訳なくて伏し目がちにそう言うと、羽根木さんは「なに言ってんの」と目を丸くする。

「あのね、子どもだって誰だって褒めてもらえるのが一番嬉しいだろ。俺だって一緒だよ。小難しい言葉使ってわかったような感想言われるより、今の藤沢の言葉の方が百倍嬉しい」

 そう言って、また顔をくしゃくしゃにして笑う。

 本当に喜んでくれてるってことがわかる、心からの笑顔に胸を鷲掴みにされる。

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