イジワル御曹司様に今宵も愛でられています

「それで智明さん、父の病室で初めて会った時に私に『覚えてないんだな』って言ったんですね」 

「ああ、あれ聞こえてた? まあ結月もまだ小さかったし、覚えてなくても無理ないかなって思って、あの時はそれ以上言わなかったんだよね」

 聞こえるか聞こえないかくらいの小さな呟きだったから、てっきり私の気のせいだと思っていた。


「すみません、あの頃は毎晩のようにお客様をお迎えしてて。学費を払うだけで手一杯で食事もままならない学生さんとか、父の研究室の方とかそのご家族とか」

 人の好きな父がしょっちゅう誰かを連れて来て、料理が得意だった母が腕を振るっていた。

 私が小さすぎたのもあるだろうけど、今でもはっきりと覚えているのは白井さんくらいで、他の人は名前も顔もほとんど覚えていない。


「俺が一番結月と年が近かったから、結構色々な話したんだけどな。結月のウェディングプランナーになりたいって夢もその時聞かせてもらったよ」

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