独占欲強めな社長と政略結婚したら、トキメキ多めで困ってます
「佐々木詩織さん」
「はっ……はい!?」
突然フルネームを呼ばれて、はっと我に返る。
智也さんのことを考えていたところだったから、思いっきり驚いた顔をしていると思う。
私の名前を呼んでいるのは他でもない、思いの主である智也さんだった。
「彼女は、新しくうちの傘下に入ってくれたValerieから出向してきてくれた佐々木詩織さんです。皆さんValerieは言わずと知れた高級ドレスブランドだ。デザイナーである藤崎兄弟の創り出すドレスはどれも仕立てがよく大変高い顧客満足を得ている。そのブランドがうちと提携することになった」
大勢の社員の前でうちのブランドの紹介と、私の紹介をしてくれる。たくさんの人に注目されてしまってどうしていいか分からず、緊張しながら智也さんの方を見る。
「今日から彼女がうちに来てくれたので、Valerieのいいところをたくさん教えてくれると思う。同じグループになったのだから、お互いに高め合っていけるようにしていきましょう。佐々木さん、うちの会社からたくさんのことを学んでいってください」
「……はい! 皆様、色々とご迷惑をおかけすることがあるかと思いますが、どうぞよろしくお願いします」
私を注目してくださっている社員さんたちに頭を下げると、皆さん拍手をして温かく迎えてくれた。
こんな大々的に紹介されるなんて思っていなかったから驚いたけれど、こうして紹介してくれたことで働きやすくしてくれたのかもしれない。