独占欲強めな社長と政略結婚したら、トキメキ多めで困ってます

 彼の腕から解放され、大きな手のひらで頭を撫でられた。そして来客用のソファに移動し、私はサンドイッチをテーブルの上に広げた。

「あの……智也さんは食べないんですか?」
「ああ。これから外出するから、そのついでに食べるつもり。今は詩織が食べているところをここで見てるよ」
「そんな……。恥ずかしいです」

 向かい合わせに座ってじっと熱く見られていると、緊張してしまって食べにくい。
せめて一緒に食べていたら気がまぎれるかもしれない、とサンドイッチの一切れを差し出す。

「智也さんも一緒に食べてください」
「いや、いいよ。詩織が食べて」
「ううん、せっかくだから一緒に食べましょう?」

 こうして佐々木夫婦の初めてのランチタイムが社長室で開かれた。

新人社員が会社でこんなふうに一緒にご飯を食べていいものか分からないけど、彼がそうしたいと望んでくれているならいいのだろう。
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