独占欲強めな社長と政略結婚したら、トキメキ多めで困ってます

「そうだよ、あれだけ素敵な人と出会ったんだーって喜んでいたのに、本人目の前にして気がついていないとかあり得ないだろ」

 素敵な人と出会った……?

「そう、一年前。Valerieのドレスの発表会のあと、お前をスタジオに置き忘れた事件のあと」

 あのとき、すっごく素敵な男性に助けてもらって、連絡先を渡して電話がかかってくるのをずっと待っていて――

「もしかして……」
「そのもしかしてだよ」

 そのときの男性が智也さん?

 うそ、そんな偶然ってあるの?

 数分だけの出会いだったから、思いだそうとしても顔が定かじゃない。
 ただ素敵な人だったっていうのは覚えているのだけど、記憶の中の彼の顔にはフォーカスがかかっている。

 連絡が来て、もう一度会えたらしっかりと思い出せると思っていたけど、ずっと会っていなかったから気がついていなかった。

「そんなことってある? 信じられないよ。そもそも、あのあとその人は連絡くれなかったんだよ」
「実はくれていたんだよ。でもお前の携帯に転送をかけていたから、Valerieの店にかかってきたんだ」

 ええええーっ! 転送!? 私、全く気がついてなかった。


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