朱莉さんの不可解な一週間
先生って単語だけなら気付きはしても流してたと思う。


だけどそう出来なかったのは、直後に聞こえてきた「会話」の所為で、


「本、あった?」

「ちょっと待って下さいね」

可愛い声の質問に答えた男のその声が、明らかに瀬能先生の声だったからビクリとした。


ビクリとしたのと同時に息を呑んだ。


持ってた資料を落とさなかったのが奇跡に近い。


思考回路は完全に停止して、今聞こえてきた会話を頭の中で反芻する。


高速で、何度も何度も反芻してから、体が勝手に動き出す。
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