朱莉さんの不可解な一週間
「桃太郎さん、桃太郎さん」

その聞き取りやすい朗読者の声が聞こえる。


数分前まで大騒ぎしてた子供たちの声も、絵本に夢中なのかその騒々しさは半減した。


だけどその所為で、聞きたくなかったものが聞こえてきた。


子供たちがまだ騒いでいてくれたら聞こえてくる事はなかったかもしれないその「単語」。


こういう時だからこそやけに耳につく単語は、1週間前なら聞き流してしまってたと思う。


「先生」

背の高い本棚の向こう側から、可愛らしい女の声が聞こえてきた。


でも多分それだけならよかった。
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