朱莉さんの不可解な一週間
それはこっちの台詞だよ――って、思う言葉を口にした先生は、あたしよりも全然慣れた感じで煙草の煙を吐き出す。


見た目は、悪ぶって煙草を吸ってる学生みたいなのに、慣れたその仕草が長年の喫煙歴を物語ってて、昔から――あの頃から――吸ってたんだろうかと、妙な事が気になった。


(くつがえ)される品行方正なイメージは、止まる事を知らないらしい。


「お(すす)めはありますか?」

「へ?」

「このお店のお薦めのメニューです」

側面の壁の上部にある日焼けしたおしながきを仰ぎ、そう言った先生は柔らかい口調で。


「焼肉定食」

そう、色気のない答えを出したあたしに、「では、それにしましょう」と、口調以上に柔らかい笑みを作った。
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