目覚めたら、社長と結婚してました
 所属は情報管理システム部。グループ内では比較的新しく設立された会社だけれどIoTの技術の進展、日常生活への普及が進む中で期待と注目度は高く、グループ内でも今一番の脚光を浴びていると言っても過言ではないと思う。

 天宮グループ総裁の孫が若くして直々に社長を務めているというのも大きな理由だ。

 ああ。それにしても、どれくらい会社を休まないといけないんだろう。上司になんて説明しよう。そもそも私はどうして歩道橋の階段から落ちたりしたのよ!

 しかめっ面になるのは、この痛みのせいなのか、思考のせいなのか。

 そのとき部屋にノック音が響き、返事をする間もなくドアが開かれた。かつかつと音を立てて大股でこちらに近寄って来る人物に視線を送る。そして相手を認識したところで、私の頭はフリーズした。

「……思ったよりも元気そうだな」

 私はどうやら、頭を打って幻覚まで見るようになったらしい。だって、そんなはずない。どうして彼がここにいるの?

 現れたのは、天宮怜二(あまみやれいじ)、三十五歳。私が勤める会社、『天宮ソリューションズLtd』の社長だ。

 「インダストリー4.0」と銘打ちIoTの普及について世界で初めて国家としての戦略を打ち出したドイツの有名プロジェクトチームとうちの会社が手を組み、共同で最新技術を用いたスマートファクトリーへの実現を進める話を取りつけ、世間的にも大きく話題になった。
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