目覚めたら、社長と結婚してました
「美味しいですね」

「お前はもうちょっと肉つけろよ。ここ数日でまた痩せたんじゃないのか?」

「まぁ、病院食って健康的ですから」

 怜二さんにサンドイッチを返して私は苦笑した。少しだけ体重は落ちたものの、元々すごく細いわけでもない。本当に標準的。ただ胸はもうちょっとあってもよかったのでは、と何度か思ったことがある。

 彼が満足するような、隣に立つのに相応しい外見ではないのは十分に承知している。

 そこで視線を感じてほかのテーブル席を見れば、私と同い年くらいの若い女性二人がこちらを見てこそこそと盛り上がっていた。

 彼女たちの目線の先を追えば、どんな話題か想像するまでもない。今の私よりもずっとお洒落に気合いが入っていて美人だった。

「すみません、私、こんな身なりで」

 たまらなくなって、私は小さく彼に謝罪する。

「は? なんで謝るんだよ。ここは高級レストランか?」

 怜二さんの回答に私はつい笑みをこぼした。たしかにドレスコードが必要というわけじゃない。たとえ高級レストランでも今の怜二さんなら十分に通用しそうだ。

「そうじゃなくて。社長である怜二さんの妻としては、ちょっと気を抜きすぎというか、申し訳ない格好だなーって」

「そんなこと気にする必要ないだろ」

「多少は気にしますよ。ただでさえ私は……その、怜二さんの好みじゃないですし、体型はどうにもなりませんけど、せめてお洒落くらいは……」
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