目覚めたら、社長と結婚してました
「ちょっと、その言い方だと子ども扱いを通り越して、まるでペットじゃないですか」

 小さく抗議する私に対し、彼はにっと口角を上げると額に口づけを落とした。

「なんでもいい。お前はおとなしく家で俺のことを待っていたらいいんだ」

 言葉を失っていると彼がそっと私から距離を取った。

「行ってくる」

「い、いってらっしゃい」

 おかげで条件反射のような返事しかできない。ドアが閉まったのを見つめ、私はその場にへたり込んだ。熱くなる頬に手をやる。

 駄目だ。身がもたない。新婚ってこんなものなの?

 我ながらとんでもない人と結婚してしまったようだ。ふうっと大きく息を吐き私は体に力を入れて立ち上がった。

 仕事を休んでいる分、早くここでの暮らしに慣れて、無理ない程度に奥さん業を頑張らなくては。

 その日、怜二さんは真面目に仕事を切り上げて帰ってきてくれたので、私たちはふたりで買い物に行くことができた。

 心配してか当然のように手を繋がれて、照れながらも私も振り払うことなく受け入れる。

 彼とのキスにも少しだけ慣れて、最初の夜のことがあったからか、一緒のベッドで寝るのが当たり前になった。

 キスをして、くっついてお互いに今日あった出来事などを簡単に話して。そんな些細なやり取りを交わし、私は彼の腕の中で眠りにつく。

 薬のおかげか、眠気が強い今の状況のせいか、あまり緊張することなく私は眠ることができた。

 彼がそばにいるからかな? こんなにも安心するのは。怜二さんはどうなんだろう。たまに見る彼の顔が心配そうで、切なそうで。だからそんなことを思う。

 けれど、いつもなにも聞けないまま私は夢の中に落ちていってしまうのだった。
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